2001年4月9日
親知らずの治療がやっと終わった。

詰め物を歯型の模型にはめて説明してくれる先生。
その手の指が白く長くほっそりとしていて、ちょっとみとれてしまった。

ダンナの手に似てる。

繊細な、ミリ単位の仕事をこなす手。
ヒトのサイボウを扱う手。

爪は綺麗に切り揃えられ、ヤスリをかけられる。
触れるヒトを傷つけないように。
細やかな器具を使いこなせるように。

キズ一つない、柔らかな白い手。

私がずっと知っていた男のヒトの手とは違う。

私の知っている手は、ゴツゴツと節くれだった手だった。指は固くひび割れて、爪は厚かった。
そのひびに、爪先に、真っ黒な鉄粉が入り込んで、いくら洗ってもとれない、赤黒い手。

でも大きくて、あったかい手。

今もあの手は、黙々と働き続けてるんだろう。
傾きかけた工場の片隅で。

どうかその手に残るものが苦いだけのものでないように。
一体なんに祈ればいいのだろうか。

大好きなその手の暖かさを思い出して、私は少し涙した。

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